ITエンジニアが不足している日本が取るべき解決策を考える

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もはや映画「ALWAYS 三丁目の夕日」に象徴されるような高度経済成長や、「土地神話」が崩壊しバブルのような札束が飛び交う時代は二度と訪れないことは判っていても、日本経済は長かった冬の時代を脱し再び成長局面を迎えようとしています。

まるで熱病のようでもあったあの喧騒を知る者たちからすれば、いささか物足りない小さく穏やかな成長ですが、それでも来るべき2020年の東京オリンピックまでは、その足が止まることはないと思われます。

その一方で、日本の貧困率はOECD(経済協力開発機構)加盟国34か国中4番目に高いとされ、「健康で文化的な最低限度の生活を保障し、その自立を助長する」生活保護の総支給額は毎年のように過去最高を更新しています。この件に関しては多角度から深い議論と早急な改善が求められるところですが、経済発展の陰で、働きたくても働けない人たち、衣食住が満たされずに炊き出しに並ぶ人たちが多く存在するという負の側面も見逃すことはできません。

そのような、景気が良いのか悪いのかさえ判らなくなるような対照的なニュースがメディアを賑わせる中、これだけは「正しい」と言えるのは、現在日本の労働市場は業種を問わず「人手不足」の状態が続き、その深刻度は日を追うごとに増している事実です。
一方で「求職者が溢れている」と言いながら、また一方で「人が足りない」と頭を抱える会社がごまんとあるという、何とも悩ましい状態にあるのが、今、日本が置かれている現状なのです。

中でも、ITエンジニアの人手不足は、「技術立国」日本の根幹を揺るがしかねないほど深刻なものとなっており、転職市場ではITエンジニアは「空前の売り手市場」と呼ばれるほどに活況を呈しています。

ITエンジニアの不足は、あらゆる産業、業種においてITが広く浸透したことと、日本が人口減少局面に突入したことが大きな要因として挙げられますが、同時に、2002年の学習指導要領改訂の際に、英数科目3割削減という、わざわざ理数離れを加速させる「ゆとり教育」政策を推し進めたこともここにきてボディブローのようにダメージを拡大させています。加えて、近年「ブラック企業」の存在がクローズアップされた中で、その矛先がIT企業に向いてしまったこともひとつの要因として考えられます。こうした「きつい、帰れない、給料が安い新3K職場」という風説が奇しくもITの権化ともいえるネットに乗って拡散されてしまったのです。この流れを受けてか、日本でも2012年から中学校の技術家庭科で「プログラムによる計測・制御」が必修とされましたが現状は焼け石に水。目に見える成果が出るのはまだまだ先の話です。

このような現実を前に、ITエンジニアを充足させる方法は、人に頼っていた業務をそれこそITを用いて自動化するか、「育成」して一人前のITエンジニアを育てる他にないのです。

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「人材育成」は企業経営にとって永遠のテーマである

ここ数年、人工知能が劇的な進化を遂げていることは周知の通りです。2013年にオックスフォード大学のマイケル・オズボーン准教授が「今後10年~20年で約半数の仕事が機械に取って代わる」と述べたとき、一部の学者たちは夢物語と一笑に付したそうですが、わずか数年のうちに一気に現実へと近付いてきました。一般人が分かるレベルでも、ソフトバンクショップの入口で愛嬌を振りまいているペッパー君は、私たちと十分にコミュニケーションが成立しますし、自動車の自動運転は基本技術が確立され、あとは実用化を待つばかりとなっています。100年前、イギリスで300万頭を超えた労働馬の仕事はエンジン(初期は蒸気機関、のちに内燃機関)の発明により機械に取って代わられました。100年の時を経て、今度は人間に頼っていた多くの仕事が人工知能を搭載した機械に取って代わる可能性も出てきました。人手不足が深刻の度を増す現代、イノベーションは雇用削減のジレンマを生む難題ではなく、労働力の不足を補う救世主にもなり得るのです。

とは言え、そう早く機械化が人手不足を完全に補うには至らないというのが大方の予想であり、人工知能が人と同じように思考し、判断する能力を持たせるには倫理的な問題も関わってくるからです。とすると技術革新と並行して「人材育成」は避けて通れない課題であるということができます。
いつの時代にも「人材育成」は企業経営の根幹であり、これなしに企業の発展はないというのが定石です。しかしながら、近年は、浮き沈みの激しいIT業界の中で、目先の業績のために即戦力の採用に拘ったがために人材育成が疎かになっている企業も少なくないと思われます。そういった背景もITエンジニアの人手不足に拍車をかけているのかもしれません。
いずれにしても「人材育成」は企業経営にとって永遠のテーマです。もはや、待ったなし。IT企業は人材育成にも力を注がなければならない時代に突入しているのです。

人材育成「じゃあ、どうやって?」

では、会社の施策として人材育成を強化するにはどうしたらよいでしょうか?何人かの経営者にこの命題を投げかけたとき、その回答は「幹部クラスを講師にして研修プログラムを策定する」というものでした。創業期の苦労話や、成功・失敗体験、経営危機を乗り切った体験談など感動あり、涙ありのまるで物語のようなストーリーが用意されている研修なのかな?と容易に想像が付く物言いでした。中には、最近の若い者は根性、協調性が足りないということで、自衛隊の体験入隊に放り込んで性根を叩き直してもらうという答えもありました。

上記の回答はどれも「精神論」の域を出ることなく、「じゃあ、ITエンジニアとしてのスキルやマインドはどのようにして育成するのですが?」という問いに対しては、口をつぐんだり、「OJTで…」という歯切れの悪い回答…つまり最も大事な部分は現場に丸投げなのです。

決して精神論を否定しているわけではありません。トップの自らのメッセージによって理想の社員像を提示することや、企業理念を共有することは、組織の一員として必要不可欠ですし、開発の現場でもビジネスの現場でも最終的に勝敗を分かつのは「気合と根性」であることも多いのです。しかしながら精神論一辺倒の研修では、新興宗教や自己啓発まがいのセミナーで聞かれるような「ちょっといい話」、つまり、刺激に過ぎず、研修が終わればすぐに何も変わらない日常に戻っていくのです。

まずは、エンジニアの実情を知らない経営陣や人事部が策定した研修プログラムを見直し、エンジニアを交えて目的、内容、目標達成期限が明確なものに作り替える必要があります。受講者の現状のレベルに合わせて細分化していけば、スキルと待遇と連携した研修システムを作ることができます。
また、日進月歩のテクノロジーにキャッチアップするべく、さらなるスキルアップを図っていたり、社内研修のプログラムから溢れてしまう優秀なエンジニアの才能に磨きをかける支援を行っていけば、会社の枠に囚われない優秀な人材を集めることができるでしょう。あくまで「エンジニア目線」が大切なのです。

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最後に確認して欲しいポイント

日本が国を挙げて取り組んでいる2020年の東京オリンピックは、純粋にスポーツの強化だけでなく、交通・通信インフラの整備等によってあらゆる分野において技術革新が進みます。準備段階では競技場やエンブレムをはじめ様々な問題が噴出しましたが、日本にとっては技術立国として世界に一歩先んじるチャンスであり、ことIT業界は世界のトップランナーに躍り出るチャンスでもあるのです。1964年の東京オリンピックの際、「衛星生中継」を世界で初めて実現し世界中が手に汗握る瞬間を共有したのと同じか、それ以上のサプライズを与える底力が日本のIT業界にあるのです。そのポテンシャルを、「人手不足」によって阻まれてはなりません。もはや「人材育成」は待ったなしの状況となっているのです。

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