IT業界で飛び交うカタカナ用語を上手に使い分ける方法とは?

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2015年12月2日の記事を再構成(文言の追加)をして作成した最新記事です。

ありとあらゆる業界には、その世界もしくは極めて狭い領域でのみ通用する専門用語(テクニカルターム)や業界用語があります。

専門用語や業界用語は、業務を円滑かつ効率的に進めるために不可欠な言葉ですし、時として国境や民族を超えた業界人の共通言語として機能することもあります。

かつてテレビ業界では、専門用語とも業界用語ともつかぬ特殊な言葉を使う人たちが存在したといわれています。

「ギロッポンでチェンネーとシースー」などという、文字をひっくり返しただけの単語の羅列が会話として成立していたわけですが、ちゃんと「六本木で姉ちゃんと寿司」言えばいいのにと思いつつも、

当時、超花形であったテレビ業界の人たちのバリバリ仕事をして、ノリが良く、何だか刹那的な生き方がどことなく滲み出ているモノの言い方に、軽蔑とも尊敬ともつかぬ感情を抱いた人もいたことと思います。

21世紀に入って爆発的に拡大したIT業界にも同じようなことが起こっています。それは「カタカナ用語」の乱発です。典型的な事例をご紹介します。

 

そもそもコンピューターなるものは海外で生まれた概念であり、基礎研究は主に欧米諸国で行われてきたものです。

ですので、そこから派生し広がっていったITは、もはやコンピューターを電子計算機と呼ぶ人がいなくなったのと同様に、そもそも日本語と親和性がありません。

ですから、IT用語が、特に日本語に訳されることなく流入してくるのは自然の流れと言うことができます。

またIT業界は、2016年にIoT(モノのインターネット)が黎明期を迎えるとされ、更なる成長を遂げようとしています。その一方で深刻な問題となりつつあるのが成長を担うエンジニアの絶対的な不足です。

今後さらに少子高齢化が進む日本にあって安定してエンジニアのなり手が育つ保証はありません。

そこで、さらなる事業拡大を目指すIT企業は、外国人の積極採用や、社内公用語を英語に定めるなど、いわゆるグローバル化を推し進めています。

日本国内では折からの人口減のため、いずれは頭打ちになりますし、今から海外展開に備えて英語に対する壁を取り払っておけば、少なくとも世界の4人に1人とコミュニケーションが取れ、ビジネスチャンスも広がる可能性があるのです。

ですので、IT業界でカタカナ語が乱発しているのは決して悪いことではないと思います。開発チームや同業者でそちらの方が意思疎通が図れるのなら全く問題はありません。

しかし、IT業界から一歩踏み出した世界でも同じようにカタカナ語を乱発しているのが問題なのではないでしょうか。

下記は、2014年にgooランキングで発表された「日本語で言ってくれればわかるのに・・・と思うカタカナ語ランキング」のトップ10です。当ランキングでは48位まで紹介されていますが、その大部分がIT業界の人が話す横文字ばかりです。

1位 アジェンダ :実施すべき計画、協議事項、議事日程
2位 オーソライズ :公認
3位 オルタナティブ :代替、二者択一
4位 エビデンス :証拠
5位 バジェット :予算
6位 パラダイム :考え方、規範
7位 マイルストーン :各作業工程の節目、里程標、画期的な出来事
8位 スキーム :枠組みを伴った計画
9位 バッファ :余裕、緩衝材
10位 コンテクスト :文脈

IT業界の外にいる人にとっては、この単語を組み合わせて会話でもされようものなら辞書なしには意思疎通すらできないでしょう。IT業界におけるカタカナ用語の氾濫は、かなりの水域にまで達していることは間違いありません。

もちろん業界内で十分意思疎通が取れるならば全く問題はありませんし、それでプロジェクトが円滑に回り出すならカタカタ用語の乱発も大歓迎です。

しかし、あくまでそれは業界内での話であって、業界の外でこういった言葉を使ってしまうとひんしゅくを買っ
てしまうこともあるので注意が必要です。

IT業界の人のカタカナ用語の言い回し

1990年代にブレイクし、未なお活躍を続けている芸人で俳優のルー大柴さんは、日本語に英単語をちりばめた「ルー語」で一世を風靡しました。「一寸先はダーク(一寸先は闇)」「寝耳にウォーター(寝耳に水)」「藪からスティック(藪から棒)」など、

英単語の挟み加減が絶妙で、最近は、松岡修造さんの「まいにち、修造」にあやかって発売された「きょうのルー語」の売れ行きも好評であるとか…。

ルー大柴さんは、実際のところは英語も堪能なのだそうですが、そこを敢えて面白くするために、「ルー語」化して笑いを取っているまさにプロのエンターティナ―です。

これを、素人が得意げに使っていれば、「何だ?この人」と数奇の目で見られ、周囲の失笑を買うことでしょう。人とのコミュニケーションの場で自分だけが「ルー語」を得意げに使っているところを想像してみてください。

あまりの滑稽さに赤面すること必至です。このように、IT業界の人のカタカナ用語の言い回しは、一般の人にはまるで「ルー語」のように聞こえていることを自覚しておく必要があります。

カタカナ用語の使用はTPOと相手に合わせて

IT業界の人が使うカタカナ用語は彼らが思っているよりも一般の人は分かっていません。

適度に使う分にはIT業界の専門性が随所に感じられ相手に信頼感を与えることにもなるでしょうが、8割方は分かりやすい日本語に翻訳しておかないと相手はほぼ分かっていないと思って差し支えないでしょう。

2010年に日立製作所が制作したCM「クラウドコンピューティング編」は、そんなIT業界の人とそうでない人との言葉の壁を、よくあるシチュエーションで表現した素晴らしい作品です。ざっと紹介すると…

・会社の重役級と思しき人物を演じる佐藤浩市さんが、客人と仕事の会話をしています。

客人「いや~、我が社もクラウドを始めましてね。」
佐藤「ほう、クラウドを。(クラウド?)」

・佐藤さんはクラウドを知らないのですが、知らないとは言えずに「知ったかぶり」をします。

客人「クラウドで便利になりましたよ。」
佐藤「クラウド…ですからね。(クラウド???)」

・後に、必死にインターネットでクラウドを調べる佐藤さん。

「…クラウドかぁ」

・後日、佐藤さんは、他社でクラウドについて自慢げに語るオチがついてきます。

少し前のCMですが、今ではすっかり市民権を得た「クラウド」も5年前なら一般の人の認識はこんなものです。

ただ、あまりに得意げに話す客人に対して「知ったかぶり」をせざるを得なかった佐藤さんの名演技に共感した人は多かったそうです。

IT業界の人たちも接する人は必ずしも業界の人ばかりではないはずです。クライアントの大元はITに関してズブの素人であることも珍しくありませんし、新規に営業をかける企業もITに強い人ばかりとは限りません。にもかかわらず、IT業界の人の中には客先に出向いてカタカナ用語を駆使する人が少なくありません。

相手がその言葉を理解していない、もしくは先のCMの佐藤浩市さんのように「知ったかぶり」をしてくれているにも気付かずに…。これでは、客先でのコミュニケーションがうまくいくはずがありません。また、親しい仲間内でそんな言葉づかいをしてしまったら、「何だこいつは?」と軽蔑の目で見られることは間違いないでしょう。

このように、決してカタカナ用語を使うなとは言いませんが、カタカナ用語の使用はTPOと相手に合わせて使い分けることが大切です。コミュニケーション全般に言えることですが「思いやり」が大事なのです。

カタカナ語が飛び交う業界で違和感を忘れないこと

カタカナ用語が乱発されているIT業界は、みなぎる希望を持って飛び込んだ新人たちにとっても大きなカルチャーショックを与えるようです。

飛び交う会話は日本語であることには間違いないけれども、そこに散りばめられたカタカナ用語の意味が分からず右往左往することも少なくないとか。それが仕事に関する重要なキーワードだった日にはもう大変です。

聞き直すのも気が引けますので、その都度スマホ片手に調べるはめに・・・、などという笑えない話も体験談としてよく語られています。

専門用語(テクニカルターム)を知らないのならそれは本人の知識不足ですが、まるでファッションであるかのようにカタカナ用語が飛び交う異質な世界は、それがために敬遠してしまう人も少なくないとすれば、少々考える必要があるかも知れません。

しかし、適応力があるのが人間が人間たる所以で、最初はまるでワンダーランドだったIT業界の水にもすっかりと馴染んで気付いた頃には自分もカタカナ語を駆使する業界人の一人になっていることでしょう。

すっかりIT業界の人になったとしても、クライアントをはじめカタカナ語とは縁のない世界にいる人たちと接することも多いでしょうから、この業界に足を踏み入れたときに味わった違和感は片時も忘れないようにしてください。

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