40代~50代のITエンジニアが「老害」「人罪」になる?

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itエンジニア 40代

勤勉で手先が器用な日本人は、寸分の狂いもないまさに「職人技」と呼ばれる正確無比な技術によって様々な伝統工芸を生み出してきました。

聖徳太子の時代から存在している金剛組をはじめ、創業から何百年も歴史を紡いできた長寿企業が日本に集中しているのは、先達の技術を連綿と受け継いできたからこそではないでしょうか。

近現代の日本が技術立国としての地位を確立していったのはむしろ当然の帰結と言っても過言ではありません。このような伝統工芸に携わる職人たちは、途方もない時間の苦しい修行と弛まぬ鍛錬によってその技術を手に入れました。

しかし、機械化と大量生産、大量消費という時代に流れに抗うことができず、職人の数は大きく減少し、後継者不足は深刻な問題となっています。

こうした「職人技」が生まれたのも、長きに渡って受け継がれてきたのも、それだけの理由があるはずですから、伝統工芸やそれに付随する技術は国を挙げて守り抜くのが後世への責任ではないでしょうか。

これまでの「職人技」に支えられてきた技術の大部分は何百年も前に成熟を遂げ、言うなれば懸命になって「守るべき」ものです。しかし、「職人」気質の人が多いITエンジニアが培ってきた技術は果たして石にかじりついてでも「守るべき」ものなのでしょうか。

その部分においては、ITエンジニアの中で世代間格差が生まれているようです。某社において新規システムの開発が遅々として進まないのは、どうも古参のITエンジニアが時代遅れの技術に固執しているという話をところどころで耳にするからです。

「IT革命」を担った若手エンジニアたちが、今や40代~50代に差し掛かっている

日本でパソコンの普及が爆発的に進み、ITという言葉が身近になりはじめたのは、Windows 95の登場あたりからでしょうか。これを契機にITは人々のライフスタイルまでをも変えてしまう大きなイノベーションを引き起こしました。

この一連の「IT革命」の一翼を担ったのが、同世代の競争相手の人数が多い中、受験戦争を勝ち抜き、就職氷河期を乗り越えた逞しい若きITエンジニアたちでした。あれから20年以上が経ち、あのときの若者は今や40代から50代に差し掛かっています。

ITで日本を変えるといきり立っていた彼らのキャリアも折り返し地点や第4コーナーが近付き、進んでいる道も千差万別です。

まさに「職人」としての道を極めるべく現場にこだわって仕事をしている人、管理職となって部内や経営の根幹に関わる仕事をしている人など、あの日あの時の熱量を保っている人は、歳を重ねてもそれが技術と経験として蓄積され、今なお輝きを放っているのだそうです。

しかし、その一方で、自身が積み重ねてきた技術に執着し、新しい技術を頑として受け入れないどころか新技術の導入を暗に妨害するなど働き盛りにしてまさに「老害」とも言える振る舞いをする40代~50代のITエンジニアも少なくないそうです。

 「職人気質」のITエンジニアが「人罪」に

伝統工芸の職人たちの役割は、先達が受け継いできた技術を守り抜くこと、一方、ITエンジニアに求められるのは、伝統的な技術をベースしながらも、日進月歩する新しい知識や技術を持って自身をアップデートすることです。

これがそれぞれの立場の「職人気質」と言うことができるでしょう。しかし、ITエンジニアが、「守り抜くこと」を主眼とした「職人気質」に囚われてしまうと、これまで会社に尽くしてきた人材が、「人罪」へと成り下がってしまうのです。

企業からすれば、いくら「人罪」に成り下がっていても、「IT革命」の一翼を担った功績には一定の評価を下し、その技術と経験には多大な信頼を寄せているだけにその扱いには非常に苦慮しているという話を良く聞きます。

また、彼らは高度度成長期~バブル時代の企業戦士からビジネスのイロハを学んでいる場合が多く、現在から見れば自己犠牲的で猪突猛進、おまけに「長い目」で物事を見る習慣など、今どきの若者が見れば尻尾を巻いて逃げていきそうなスピリットを新人の頃に脳の髄まで刷り込まれているのです。

現在、20代~30代前半の所謂「若手エンジニア」の転職が増えてきているのも無関係ではなさそうです。

若手エンジニアは「35歳までが勝負」と考えている

世間的に見れば40代~50代はまだまだ働き盛りですが、社会人になったばかりの若い世代にとっては親と同じかそれに近い世代であり趣味嗜好も異なれば、物事の捉え方も全くと言って一致しません。

大人はそれを「未熟な考え」と嘲笑し、若者は「古臭い」と軽蔑する、言わば「ねじれの位置」の関係です。これはエジプトで出土した古代の石碑にも「最近の若い者は…」という老人の嘆きが刻まれていたそうですから、この話題は人類に課せられた永遠の宿題のようです。

ただ、現在の若手エンジニアは、終身雇用や定期昇給と言った旧来の日本の雇用制度が有名無実化しつつある中で社会に放り込まれたがゆえに、もし「会社というプライスタグ」がなくても自身の腕で社会を渡り歩いていける「人財」になりたいという気概にあふれている人が増えてきました。

転職コンサルタントの弁では、それゆえが、体力、気力ともフルパワーの持続する「35歳までが勝負」と考えている人が多いのだそうです。

そんな中で、扱っている技術が古臭い、同じ仕事ばかりで新しい仕事を経験できない、下流工程ばかりで開発経験が積めないなど、焦燥感を募らせている中で、親の年ほども離れた先輩に「石の上にも3年…」などと諭されれば、却って見切りをつけられるきっかけになりかねません。

若手エンジニアは「チャレンジ転職」の割合が多い

一昔前は「ドッグイヤー」、それがさらに「マウスイヤー」と言われるほどに時代の移り変わりが激しい昨今、中でもその時計の針の進みを速める役割を担うIT業界において、「石の上にも3年…」という言葉は、大事なのは頭では分かっていても若手エンジニアにとっては永遠を感じさせるほどに長い時間です。

3年間ひとつの仕事をやりきったとき、得られるものも大きいでしょうが、きっとその精神状態ならば、「この3年で他に何ができただろうか」という思いの方が頭をもたげることでしょう。

若手エンジニアの多くは、ITエンジニアという職を選択した時点で、30代半ばでのプロジェクトリーダーやマネージャーという立ち位置にいるキャリア像を思い描いています。

ならば、それまでに数多くの経験を積んでおきたいと思うのは極々当然ことで、時間が経つほど自身の描いたキャリア像とのギャップに焦りを感じるようになるのです。

そういった現代の若手エンジニアの気質を反映してか、近年は、「新しい仕事」、「より高度なレベル」へとチャレンジ転職を目指すケースが増えていると言います。

8割以上のIT関連企業が「エンジニア不足」を実感していると言われる時代にあって、将来性のある若手エンジニアを転職市場に流出させてしまう責任の一端は、意識する、しないに関わらず40代~50代のベテランエンジニアにもあることは否定できません。

ただ、こうした現状を生み出している現状をどうにか打破しなくては双方にとっていい結果にはならないと思われます。

最後に確認して欲しいポイント

ITエンジニアは40代~50代のベテランに差し掛かっているからこそ、瑞々しい感性を持ち続け、新しい知識や技術の習得に貪欲であるべきです。

ITエンジニアの職人技は「守る」ものではなく「更新され続ける」ものだからです。

また、企業もこの世代のITエンジニアを抱えることに慣れていないせいか、彼らの技術や経験を活かす適材適所の配置ができていないことも彼らを意固地にしてしまう原因ではないかと思われます。

もし、彼らの目に、Windows95を求めて深夜の電器店に行列ができた頃のような輝きが戻ってきたならば、若手エンジニアにとっても魅力的な先輩でありキャリアの目標になるに違いありません。

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