アメリカと比較してわかる、日本でITエンジニアの地位が上がらない理由

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アメリカ エンジニア

これまで、人々のライフスタイルを劇的に変えるようなイノベーションの多くは、日本の外から入ってきました。

それは弥生時代に大陸から入ってきた稲作に始まり、中国・唐に倣った奈良時代の都市計画や律令制度、戦のあり方をすっかり変えてしまった戦国時代のヨーロッパからの鉄砲伝来、明治維新からの一連の近代化へとつながる幕末の黒船来航など教科書に載っている史実だけでも挙げればキリがありません。

しかし、「きっかけ」は他国の力を借りたとしても、伝えられた当時最先端の技術を吸収するばかりでなく、新たな命を吹き込み、本家本元を凌ぐほどにまで育て上げる芸当は日本人の専売特許と言っても過言ではありません。

フランスのある一流ホテルのトップ・シェフが日本人であったり、中国人観光客が日本の中華料理店で行列に並ぶなど、冷静になって考えればかなり「面白い」ことさえも現実に起こっているのです。

その証拠に、自動車はもちろんのこと、電化製品や、衣料品に至るまでメイド・イン・ジャパンの世界的信頼度は、海外に行くほど実感すると言われています。しかし、「信頼の日本製」も元々の技術は外から入ってきているものがほとんどです。

これは、IT業界でも、日本にGoogleやFacebookといった進取の気性に富んだ企業が誕生しなかったり、スティーブ・ジョブズやビル・ゲイツのようなずば抜けた起業家が現れないのと無関係ではなさそうです。もう少し踏み込んで見てみれば、ITエンジニアを取り巻く環境の余りに大きな違いが明るみになりました。

平均年収に見る、日米のITエンジニアの違い

19世紀半ば、金鉱を掘り当てて一攫千金を狙う若者がカリフォルニアに殺到したように、ITの聖地シリコンバレーにはITエンジニアとして一山当てたい若者たちが起業したり、IT企業の門を叩いています。

まるで現代版のゴールド・ラッシュが起こっているかの様相ですが、アメリカが世界中のITエンジニアの心を掴んで離さないのはそれだけの待遇が彼らを待っているからなのです。

日本のITエンジニアの場合

まずは日本のITエンジニアの平均年収を見てみましょう。年収ラボの調査結果によると、平成26年度のシステムエンジニアの平均年収は542万円。男性の平均年収は556万円、女性は482万円とやや差が開いています。

この差は、全体的な勤続年数や、女性の努力では埋めるのが難しい「体力差」が表れているものと考えられます。また、企業規模別では、従業員1,000人以上の企業の平均年収は、597万円。100~999人で529万円、10~99人で483万円という結果でした。

年収ラボでは、ITエンジニアの高い専門性が報酬に結びつかない原因を次のように分析しています。

基本的にプログラミングは世界共通語ですので、どの国で行っても同じです。したがって、SEやプログラマーの雇用は世界的に広がっており、その賃金も世界規模で考えられます。

世界的に見た場合、日本のSEの収入はまだまだ高い水準にあり、中国では日本の1/4、ベトナムに至っては1/10です。

企業から見れば、コストをできるだけ抑えたいのが本音ですので、こうした低賃金国のSEは非常に魅力的に見えます。日本のSEが高い専門性を持ちながらも収入面で報われない理由にはこうした背景もあるのです。

日本のIT業界にも、海外の安価な労働力は明らかな脅威となって、ITエンジニアの待遇にも跳ね返っているようです。日本のITエンジニアには、この現状を打破するためのクリティカルヒットが求められているのです。

アメリカのITエンジニアの場合

Glassdoorによると、アメリカ合衆国における所謂エンジニアの平均年収は75,867ドル(約835万円/1ドル=約110円)。Indeedでは、日本円で約900万円と、日本と比べて平易近年収がかなり高いことが分かります。

日本とアメリカは社会構造にも大きな差異があるので一概に平均年収だけでは両国のITエンジニアの違いを語るのは説得力に欠けます。

ただ、確かなことは、日本のITエンジニアの年収分布を見ると平均付近がボリュームゾーンとなっており、日本人はそれが普通であると何の疑いも持ちませんが、アメリカは「1%の人が富の80%を保有する」と言われる超格差社会、ITエンジニアの年収分布も山型ではなくピラミッド型となっています。

つまり、アメリカのITエンジニアは、平均年収は高いけれども、「貰える者」「貰えない者」の格差は天と地ほどにも広がっているのです。

しかしながら、この現象はITエンジニアだけではなく、アメリカ社会全体に当てはります。その中でもITエンジニアは大学等でコンピューター工学を専攻した者が就く職業とされているので、それ自体が狭き門であり、社会的地位も高い職業なのです。

日米のITエンジニアの差が生まれる要因

先に述べたように、アメリカのITエンジニアは、原則として大学等でコンピューター工学を専攻し基礎理論をきちんと学んだもののみに門戸が開かれるのに対して日本の場合は、折からのなり手不足のため、文系の学生でも「使って育てる」スタンスで構わず採用しているのが現状です。

この事象からも、ITエンジニアを「人材」と捉えているのか「人手」と捉えているのかの差を見て取ることができます。

また、日本では未だにプログラミングは労働集約型の単純労働と捉えられている風潮があり、プログラムをはじめ技術面に全く明るくない人間がSIerから上流工程に携わり、エンジニアの上に立って指揮を執る何とも不思議な光景が当たり前のように見られます。

この状態ではエンジニアは正当な評価は得られませんし、「技術者」の視点を欠いた開発が相も変わらず行われているのが現状なのです。

一方、アメリカの場合はITエンジニアになること自体がステイタスであり、サービスやプロダクトに「技術者」としてのアプローチをすることが逆に歓迎される環境にあります。

また、アメリカのスピリットを象徴しているとも言えるベンチャー企業への投資意欲が全般的に高いことも、IT業界の隆盛とITエンジニアの地位向上を後押ししています。

その結果、世界中の人のライフスタイルまで変えてしまうようなイノベーションを生む環境が醸成されていくのです。

最後に確認して欲しいポイント

日本がIT立国として確固たる地位を確立し、世界を変えるような「日本発」のイノベーションが生まれるような風土を醸成していくのなら、一にも二にもITエンジニアの地位向上が必要です。

これは、IT業界に限らず、どの分野においても言えることですが、その道のスペシャリストを、「専門分野」という殻に閉じ込めずに、広く経営に参画できる道筋を作ることによって、時流を的確につかみ、経営センスに優れ、なおかつ技術にまで精通した卓越した人材の輩出へとつながっていくのです。

そうなれば、GoogleやFacebookと並び評されるIT企業や、一時代を作るような経営者が出てくる日もそう遠いことではありません。

ビル・ゲイツやスティーブ・ジョブズ、マーク・ザッカ―バーグといったレジェンドと呼ぶに相応しい起業家の共通点は「叩き上げのプログラマー」であることです。彼らのサクセスストーリーを支えたのは、類まれな才能と「確かな技術力」に他なりません。

アイデアは会議室ではなく、常に現場で生まれるもの。だからこそ、現場で最先端の技術と対峙しているITエンジニアにこそ陽を当てるべきなのです。

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